時々エプロンを着けたまま買い物に行くことがあります。
エプロンのポケットに財布や鍵を入れて手ぶら(バッグを持たずに)で
買い物ができるからです。
子どもが産まれる前の話ですが、その日私はエプロンをしたまま近所の
酒屋に行きました。わりと大きな酒屋さんで、入り口付近にワインの木箱が積んでありました。そしてそこに「ワインの木箱☆一個500円!」などとかいてあり、私は「やったー!おしゃれな木箱だ!家で使おう♪」と、木箱を物色し始めました。
木箱はよくよく見ると釘が出ていたり、ガムテープがはってあったりしているものがあるので、私は一つ一つ積み上げながら一生懸命選んでいました。
ふと視線を感じて顔を上げると初老の男性がこちらを睨んでいました。
「いけない!通るのに邪魔になったかな?でも、スペースはあるし・・・。
何だろう?」私はあいまいに笑って、また木箱の選別に取りかかりました。
すると男性はつかつかと私のほうに歩み寄り、「ちょっと!アンタ!!」と
私に向かって怒鳴りました。「は、はい?何でしょうか?」と私が男性のほうを向くと、男性は
「アンタはいらっしゃいませも言えんのかー!!」
とさらに怒鳴りました。
あっ!店員と間違えたのか!!
男性が怒っていた理由がやっと分かりました。その時の私の服装は、
Tシャツ・Gパン・スニーカー、そして絵の描いていないシンプルなエプロンでした。そしてワインの木箱を積み上げていた。(彼から見たら片付けていた)
状況証拠はそろいました。彼が間違えるのも無理はありません。
その間も男性はずっと怒っています。「商売っていうものは・・・・近頃の人は・・・・・」その態度はとても偉そうで私はだんだん腹が立ってきました。
何もそこまで言わなくてもいいじゃないか!あんたがそんなに言うんなら、
こっちだって言わせてもらいますよ!!・・・で、ついに言ってしまいました。
「あのー・・・。私、お店の人じゃ、ないんですけど・・・・。」
「・・・・・えっ!?」
男性はお店の中を見渡しました。店員さんはお店の制服を着ていました。
明らかに私の服装とは違い、男性もそれを悟ったようでした。
「ごっ、ごめんなさい!!間違えました!!」
男性は深々と頭を下げて私に謝り、早足で店の奥に消えていきました。
その後私は選んだ木箱をカートに入れ、続いてお酒を買いに店の中に
入りました。先ほどの男性らしき人が私を見て、また頭を下げました。
「いえいえいえ。そんなそんな。」と訳の分からない返事をして私はレジへ
向かいました。
確かに彼は間違ったことは言っていませんでした。
ただちょっと人を間違えてしまっただけなんです。
正義感の強い良い人だったんです。
これに懲りずに世直し、頑張って下さい。
ですから、あれからその酒屋にはエプロンで行っていないという話でした。
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