-前回からの続き-
「1300gカレーお願いします!」
私がそう告げると店員さんは少し驚いたようでしたが、さすがはカレーの
プロです。にこっと笑いながら「かしこまりました。お客様、1300gカレーに挑戦するのは初めてですか?」店員さんは私が初めてであることを告げるといろいろルールを説明してくれました。確か・・・・
○1300g以上であればどんなカレーでも良い。トッピングも自由。
○30分以内に全て食べきること。(20分だったような気もします。
何分大昔のことなので記憶が少し曖昧です。申し訳ありません。)
○食べている間は席を立ってはいけない。
○水や福神漬けなどは自由に食べて良い。
○少しでも残してしまったら全額支払いをすること。
こんなところでした。続けて店員さんは言いました。
「もし成功したら女性では県内で2人目ですよー。頑張ってくださいね!」
県内で2人目!?成功した女性がいる!?よしっ!
私は俄然やる気になりました。
頼んだメニューはポークカレーの甘口1300g。それに納豆をトッピングしました。この時夫が何を頼んだのかははっきりとは覚えていませんが、
普通サイズ(300gくらい?)のカレーだったと思います。
ドキドキしながら待つこと数分・・・・
遠くからカレーがやって来ました。
正確に言うと店員さんが運んで来てくれたのですが、その尋常でない大きさでは「カレーが近づいて来た」と呼ぶしかありませんでした。4人がけのテーブルにどーんとおかれたカレーライスはまさに「キング・オブ・カレー」と呼ぶにふさわしい一品でした。お店の中のすべての人が私の仰天した顔を見てクスクスと笑っているような気がしました。
店員さんはストップウォッチをテーブルに置き、
「では、どうぞー!」と掛け声をかけました。
私はガッとスプーンを掴み、カレーに向かいました。
まずはライスです!「初めはあえてご飯のみを食べ、ご飯が減ったらカレーをつけて食べる。」これは飽きないための作戦です。スプーンに山盛りの
ご飯をのせ、一気に丸呑み!決して噛んではいけません。
満腹中枢を働かせてはならないのです。
私は作戦通りライスを口に入れました。
「熱っ!」
「ライスをくずせ!熱を逃がすんだ!」
夫がメニューでカレーを扇ぎながら指示を出します。
カッカッカッとスプーンでライスの山を崩しながら、私は必死でライスを
丸呑みし続けました。
「よしっ!いいペースだ!頑張れ!」
夫の応援が励みになります。
時々視界の端に、店員さんの姿が見えました。交代で私の様子を見に来たようでした。店員さんはニヤニヤと笑っているようでしたが私はそれどころではありません。ライスをひたすら飲み続けました。
そして、ライスが半分くらいに減った頃・・・
「よし、カレー食え!カレー!」
夫からのアドバイスで、私はご飯にカレーをつけて食べ始めました。
うまい!ココイチのカレーはうまいなあ。
この頃で確か7、8分だったと思います。
そして10分くらいでほぼ3分の2を食べ終えました。
それからがきつかったです。水を飲んだり福神漬けを食べたりしながら
少しずつカレーは減っていきました。残り5分くらいの頃でしょうか。店員さんが来て「すごい!あと半人前ですね!」と言ったのを覚えています。
半人前・・・半人前のカレーの前に私は崩れ落ちました。
「いやあー、女性の方でこれだけ食べたら大したもんですよ!」
店員さんのフォローも私には虚しく、肩を落としてレジへ向かいました。
夫は私のカレーの代金を払ってくれました。
夫の優しさが身にしみました。
もう10年も前の話です。
あれから10年の月日がたちましたが、いまだ私の闘志は衰えておらず
家族で回転寿司に行くと、夫の皿の横に私の皿を積み上げ枚数を競って
しまいます。いまや私は家計を預かる主婦ですから、そんなことばかり
していては、やりくりが大変になってしまうと分かっていながらも
やめられません。
夫はいつも「ほんとにお前は負けず嫌いだなあー。」と笑いますが、
かといって私に勝ちを譲ってくれたことはないのです。ただの一度も。
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